入院11日目の朝です。
相変わらず、寝たまま天井を見上げています。
仰向けのまま、おなかの上にキーボードを置き、パソコンを操作しています。
ただじっと痛みを我慢するよりは、パソコンをしている方が気が紛れます。
もともと、あまりテレビは見ないのですが、テレビを見てると疲れます。
病室の人と、たまに会話します。痛い時は、話ができないので、黙っています。
痛みが治まると、話せます。
機嫌よく話したり、突然黙ったりするので、はじめは、情緒不安定な人!?みたいに思われたみたいですが、「痛い」ということが分かっていただけると、黙っている時は、放っておいてくれるので、ありがたいです。
この病棟は、眼科の患者さんが多いです。
そのほとんどは「白内障」。
入院したかと思ったら、あっという間に退院していきます。
おととい入院してきた、茨城出身の白内障のおじさんは、今朝、退院しました。
「お先〜!。ごめんね、ごめんね〜♪」と言い残し、去っていきました…
昨日、入院してきた男性は、手術をするのが左目で、手術をしない右目は、全く見えないそうです。手術をすると、しばらくは眼帯を外せないため、全く目が見えない状態になってしまいます。眼の不自由さを、たくさん話していただき、またまた勉強になりました。色々な人がいるんだなぁ…
これから処置が始まります。
これが本当に苦痛です。
処置の時間が来ると、せんせいが車いすで迎えに来てくれます。
処置は、超美人先生をはじめ、5〜6名の先生がしてくれます。 痛いことが分かっているので、優しく声をかけてくれます。
「う〜。痛い〜!」
「痛いよね〜。すぐ終わりますよ〜!」
「う〜。死ぬ〜」
「もうちょっとだからね!」
「まだ終わらないの…?」
「ごめんね〜。もうちょっとだからね!」
痛いと言えば… こんなことを思い出しました。
ある朝、あまりに右足が痛くて、じっと仰向けのまま、痛みに耐えしのんでおりました。
看護婦さんが声を掛けてくれたような気がするのですが、そのままじっと痛みが治まるのを待っていました。
ちょっと楽になった時、再び看護婦さんが現れました。
「ずいぶん痛そうだったけど 大丈夫?」
「はい。ちょっと治まりました… あ、そうだ! 採血はいつですか?」
「もう、やりましたよ!」
「ええっ!? 気付かなかった…」
そうなんです。 ゴムでしばって、針を刺して、血を抜いたのに、全く気づかないくらい痛かったんです。
いまは痛みも和らいできましたが、この痛い思いは、忘れないと思います。
リンパへの転移は、まだ結果が出ません。
この結果次第では、化学療法の説明となり
インターフェロン、抗がん剤は、避けて通れない感じです。
やっぱり、抗がん剤って聞くと、気が重くなります…
お隣のベッドのガンの人は、点滴の抗がん剤で、今朝、ごっそり毛が抜けていました。
毛が抜けるとかはいいのですが、グッタリしてやつれていくみたいなイメージが強くて、やはり気が重いです…
動けるのに、動かないのは、苦痛だと思います。元気な人が、この入院生活は、ヒマでヒマで仕方ないだろう…
動けないので、動かないのは、苦痛になりません。 一日中、ほとんど寝ているだけなのに、何かしたいという欲求がわきません。
テレビで食べ物を取り上げる番組が多く、そんなものを見ても、ちっとも食べたくなりません。
考えられないのは、ビールのCMを見ても、全く飲みたくなりません。
食事は、2つのおかずから選択できます。だいたいは、肉系と魚系の選択です。食べたいという欲求が薄いので、いつも、どっちでもいいです。
ゼロからの出発です。 一歩ずつ。
なんか内容が暗いなぁ〜。そうだ。いいことが一つありました!
リンパの手術の抜糸をしました。 少しずつ身体から異物が抜けていく…
ハ〜ピバ〜スデ〜 TO YOU♪
ハ〜ピバ〜スデ〜 TO YOU♪
ハ〜ピバ〜スデ〜 DEAR ツ〜キック〜♪♪
ハ〜ピバ〜スデ〜 TO YOU♪
いや〜 実にめでたいですね〜。
今日は、「2キックのお誕生日」です!
午前と午後 一日2回の処置がありました。
昨日、今日と、処置が終わると汗びっしょり…
処置でエネルギーを使い果たし、処置後は、しばらく寝て、起きると熱が出て…
良くは なっていると思うのですが、痛みだけは、なかなかきついです…
大部屋に移りました。8人部屋を6人で使っています。
移動してきた私を、先に入院されていた先輩患者たちが取り囲む…
「それは何? パソコン??」
「あなたは何科の患者さん?」
「わたしはね、もう1ヶ月ここにいるんですよ。」
「その足についているのは何?」
新たな仲間を歓迎してくれているのか!?
いきなりの質問攻め。 とりあえず ごあいさつ…
「今日からお世話になります。あらいです。」
そして、これまでのことを説明をすると…。
「ああ。そうですか。ではお仲間ですね。」と。
「お、お仲間??」
「そう。ここにいる皆さんは、みんなガンなんですよ。」
「え〜!?。そうなんですか?」
みなさん、それぞれ違う、皮膚ガン。
他の皆さんは、普通に歩けるのですが、私は寝たきりなので、私のベッドに集まっていただいた。
「皮膚のガンにも、色々あるもんだ」
という話になり、せっかくパソコンがあるので、今度はインターネットを使って、それぞれ、皆さんのガンを調べてみよう!ということに…。
「そうかあ。そうなんだぁ。オレのガンは、進行が遅い悪性腫瘍なのかぁ…」
皆さん、それぞれ自分のガンのことを調べる。
こう見ていくと、皮膚ガンの中でも、私の「悪性黒色腫」というガンは、やっぱり「たちが悪い」ことが分かった。
今度は、皆さんで、それぞれの診断の説明書を見せ合ってみた。
ガンの進行は、4つのステージに分類される。
ステージ1が一番治りやすく、ステージ4は治療が難しいとされている。
余命が言い渡されるのはステージ4。
診断説明書によると、皆さん、ステージが1〜2a。
私のステージは、2bということだったので、私が一番重症かもね。ということのようでした。
症状は皆違うのですが、みんな共通点があることが分かりました…
●痛くもかゆくもない
赤い斑点が出ている人は、とってもかゆそうに見えるし、眼の下が黒くなっている人は、とっても痛そうに見える。
わたしの場合もそうでしたが、痛くもかゆくもないのがガンなんですよね。
●放っておいた
これも共通。
自覚症状がないから、まあいつか行けばいいかと、思えてしまうこと。
●ガンなんて全く他人ごと
ガンの話は聞くけれど、まさか自分はならないだろうと、思っていたこと。
ガンと宣告された時のショックも、みな同様でした。まさに「が〜ん」という感じで…
とにかく、ぼくたちは、ガン。
みんな同じガンだね!。
そう、われら、機動戦士ガンダネ。 ビームサーベルでガンをぶった切る!
ようし!ガンと闘うぞ〜!!。
一致団結したのでした…
入院してから、いいお天気が続きでしたが、今日は久々に、どんよりとしたお天気でございます。
今日から大部屋です。個室は広すぎて、身動きできない私にとって、手が届かないところに全てがあったので、不便でした。
今は手の届くところに全てあるので快適です。
今日の痛みは、それほどひどくありません。ただ、昨日のショックが…
●6月7日
ショッキング!
まず、今の両足はこんな感じになっています。
私のガンは「左足の付け根」です。
ここは、大きくくりぬいたあと、右足から皮膚を切り取り、張り付けていて、それが、ある程度定着するまで、ふたをして、圧力をかけて、その上からテープでとめてあるので、かなり盛り上がっています。
そして、ももの付け根から、ももの内側にかけて、15cmほど切って、そこを開き、リンパを取りました。
リンパ液を外に出すために、管が入っています。
毎日50ml〜100mlのリンパ液が出ています。 中はこんな感じです。
右足は、移植するための皮膚を、ハガキくらいの大きさで、はがしました。
今は、こちらの方が痛みます。
この右足は毎日ガーゼを張り替えます。 中は、こんな感じです。
何がショッキングだったのかというと、一度も開けていなかった左足の大きく切り取ったところを、手術後、初めて開いたのです。
このふたと、圧力は水曜日にはずすとのことなのですが、とにかく、傷口があまりにすごい状態で、ショッキングでございました。
あまりにすごくて、写真は撮れませんでした。 いや撮りました。
でもグロテスクすぎて、とても見せられません…
●6月6日
ジャパンOPEN
先週の金・土・日の3日間、辰巳で行われた「JAPAN OPEN」。
結果と動画を見て、感動しています。
JAPAN OPENになると、日本選手権に出られないけど、実力のある選手がたくさん出場できて、とってもいいチャンス!
知っている子もたくさん出ています。
直前レッスンをするはずだったアンナちゃん、なかなかの記録だね!。今回もあの「キモイ追っかけくん」はいたのかな?。
選手たちが、このジャパンOPENに、どのくらい重点をおいているかわかりませんが、全体的に記録は、いい感じですね〜!
つくづく日本のレベルは高い!
2バタの松田選手は、安定感ありますね〜!
女子2フリの伊藤選手・上田選手2分切ってますね! 素晴らし〜い
女子1バック寺川選手59秒60は、素晴らしい記録ですよ!
今シーズンすでに1分を5〜6人が切っていますが、世界TOP3に入りますね!
男子背泳ぎの古賀・入江選手確実に53秒台は、さすが! タンコック選手が、新ルールで52秒台を出しているんですよね〜 進化してるなぁ…
男子個人メドレーの高桑選手の安定感は抜群です! 確実に2分を切りますね〜。
女子1バタのスーパー中学生、細田選手、日本選手権より記録を伸ばしています! あの青山綾里選手の記録をやぶったわけですから、今後は大注目選手ですね〜 テンポよく 水面を滑っていくような泳ぎは見ていて気持ちいですね!。
そして、なんと言っても 酒井選手の2分07秒台は素晴らしい〜!! もう水着は関係ないですね!
日本の女子の背泳ぎのレベルの高さは、今に始まったことではないですが、こうも次々世界TOPクラスが出るというのは、背泳ぎは、日本人向き?と思ってしまいますよね。
私の勝手な見解ですが、唯一 背泳ぎは、自分の目でストロークが全く見えない泳ぎです。
見えないということは、感覚が大事なんですよね。日本選手の背泳ぎってとっても丁寧ですよね。
外国人をひとまとめにできませんが、やはり外国選手の泳ぎは、パワフルというか雑というか…。
やはり、背泳ぎは、繊細さが重要で、日本人のわびさびを知る繊細な感覚が、背泳ぎには重要なポイントのような気がします…
記録もまとめました。こちらから…
では、これまでの経過を…
●6月2日 手術の日
午前11:00に いよいよ手術となりました。
「あらいさん では これより手術となります。約6時間くらいの手術になると思います。では手術室へ行きましょう。」
「行きましょう…って、どこに乗ればいいんですか?」
「ご自分で歩いていってください」「え〜っ!? 歩いて行くの?」
手術室までは点滴をしたまま 歩いて行きました。
手術室は ドラマで見る以上に異様な感じのところで ここで何があっても 外部には絶対に漏れないような!? 密封された空間でした。
手術台には自分で寝ました。 仰向けになり 上を見上げると 手術室のライトがあって 6人の人がわたしを取り囲んでいました。
みんな帽子にマスクに手袋をしていて どの人が超美人先生かわかりません。
酸素マスクを着けられました。
麻酔の先生が「今から麻酔を入れていきます。同時に点滴にも薬を入れます。点滴の方はちょっと痛いかもしれません。ゆっくり呼吸をしてください」
すぐに意識が遠くなって…
何か夢を見ていました。
よく覚えていませんが、遠くで声が聞こえました。
「あらいさん 終わりましたよ」
ボーっとして よく状況が分かりません。
目を開けると 周りの景色が見える。
自分がたくさんの管でつながれている。
口には酸素マスクが付いている。腕には点滴が。身体からいくつか管が出ている。足にはエアポンプが付いている。指先にも洗濯バサミみたいなものが付いている。とにかく全く身動きできない…
おそらく この時 午後5:00頃だと思う。
午後8:00頃まで すぐ横に母親がいたみたいだが 一言も話せなかった。
深夜0:00
どうしても のどがかわき 看護婦さんを呼ぶが 「まだ水を飲んではダメ」と言われ 口をゆすぐことだけOKに。
口をゆすぐと言っても 仰向けのままなので「仰向けのまま はきだす用の洗面器みたいなもの」を用意され、それを使って口をゆすぐ。
寝たり起きたりしながら朝を迎える
●6月3日
朝6:30 体温と血圧を測る。 体温は38度。血圧は正常。
看護婦さんが聴診器でおなかの音を聞く。
「あ、動いてる。はい じゃあ お水を飲んでいいですよ。」
二日ぶりに水を飲む。
「あ〜。」
お茶を飲んでもいいか聞くと、お茶もOK。
冷蔵庫にあった、私が世界一おいしいと思っているお茶「サントリーのウーロン茶」を飲む。
「あ〜。おいしい…」
身体の状況は前日と変わらず…。
酸素マスク、エアポンプ、おしっこの管、リンパ液の管、点滴、指先の洗濯バサミ…
担当のお医者様チームが登場。 処置をする。 痛いかどうか聞かれるが 頭もボーっとしているし ずっと痛いので どのくらい痛いのかを伝えるのが難しい。
痛み止めをつかう。 座薬は1日2回まで あとは睡眠薬入りの痛み止めを点滴で入れる。
●6月4日
再び 熱が上がる。また酸素マスクをつける。 全く身動きできない状況が一日続く。
一日中 窓から見える空を見ている。
不思議と退屈しない。
常に慌しく生活を送っていた私にとって ただただ時間が過ぎていくなんて 考えられないことだったが。
きっと からだが元気だと 退屈で仕方ないのだろう。
真っ青な空に 雲がゆっくり流れていく。
気づくと1時間 2時間 たっている。
おしっこの管が取れ、トイレは車いすを使っていくことに。
トイレに行くことが こんなにも大変になるとは。
★トイレに行く手順
・看護婦さんを呼ぶ
・ベッドのリモコンで上半身を起こす
・足のエアポンプをはずしてもらう
・首にポーチをかける
・首のポーチにリンパ液の袋を入れる
・両手の力でベッドに腰掛ける
・片足をベッドから下ろす
・もう片方をベッドから下ろす
・看護婦さんに抱えられながら車いすに座る
・車いすの足を乗せるところに足を乗せる
・トイレに移動
・車いすの足を載せるところから足をおろす
・看護婦さんに抱えられながら便座に座る
行こうと思ってから 便座にたどりつくまでに 10分以上かかる。
看護婦さんのお仕事は大変。
看護婦さんは 常に気にかけけてくれる。
身の回りのほとんどのことができないので 些細なことでも呼ぶしかない。
看護婦さんは、一体何人いるんだろう…
これまでだけでも10人以上の看護婦さんに、お世話になっている。
大ベテランさんは、とにかく気が付く。
若い看護婦さんが多いのですが、その中でも「新人なのでよろしくお願いします」とご挨拶に来た 「超不慣れちゃん」は、間違ったことはしないのですが、とにかく動作がのんびり。
不手際があると、数分後に、「先ほどはすみませんでした」と お詫びに来る。 一生懸命なので応援したくなる。
●6月5日
熱が下がらない…。 足が動かない…。
この足は動くようになるのだろうか?
足の痛みは 移植するために皮膚をはがした 右足の方が痛い。
だが 右足は 上げようとすると動く。
逆に左足は 右足ほど痛みはないのだが、全く動かない。
足首から先は動くが 足自体を動かそう思っても 全く動かない。
大腿部は感覚もないので、自分の足を触っているのに、違うものを触っているかのよう…
普通食になった
夜6:00に食べたきり、朝8:00まで何も食べないのに、全くおなかがすかない。
この足が動くことを信じて、待つしかない。