ドーピングを考える


これは、朝日新聞の記事を元に新井が意見を加えたお話である。

私はソウル五輪以後、ドーピングの様々な研修会に参加し、最新のドーピング事情を聞いてきました。
はじめはドーピングに関して、詳しい知識もなく参加していたので、「ドーピング」って、そんなに効果があるのかなあ?。とか、身を削ってまで薬物に頼る心理が分からない…。という気持ちが多くありました。
88年ソウル五輪、皆様も記憶にあると思いますが、、カナダの「ベン・ジョンソン」選手にドーピングが発覚し、金メダル剥奪、世界記録も未公認となりました。ドーピングが世間に知れ渡った最も大きな事件でした。彼のドーピングは「ジヒドロテストステロン」という、いわゆる、筋肉増強剤。見た目に分かるとおり、異常なまでの筋肉質。これは疑われます。
まあこれがきっかけとなって、ドーピングが騒がれるようになりました。
ドーピングとは「薬物による競技力向上」。特に顕著に変化が現われるのは、「女子」。やはり、運動能力的に男性に劣る女性としては、男性ホルモンを加えるだけで、簡単に競技能力が向上するのです。もうこれも過去の話。水泳界でも恐らくこれに引っかかると思われる選手(特に東ドイツ・中国)が多く存在し、運良く検査を免れた選手は多いはず…。
かわいそうなのは当時、本人達は薬物の存在を知らされておらず、国家ぐるみによる作戦で、コーチが選手をだまして注射をしたり、薬を飲ましていた。現に、今、この頃の選手達は、不妊症、声が低くなる、ひげが生える…などの後遺症に悩まされている…。
しかし、21世紀に入り、ドーピング事情も少々変わりつつあるようです。「血液中に造血ホルモンの遺伝子情報を組み込んだ無毒のウイルスをいれる」こんな事が起こりつつあるということ。これでは、「尿検査」くらいでは決して見つける事など不可能。どこまで続くのかドーピングのいたちごっこ…。競技者、そして、指導者達よ、正々堂々と勝負していただきたい。

私の思うドーピング番外編。
こうなったら、どんな違法薬物を使ってもかまわない競技を作るのも一つかも。
「ドーピング競技」として、どんな薬物を使ってもいいから、どれだけの記録が出るか!!。
例えば、「男子100m自由形」と、「ドーピング男子100m自由形」の2種類の競技を行う。


以下が「朝日新聞」に全4回に渡って、掲載された記事の内容です。
横綱貴乃花の引退で、新しい時代のあり方が問われる大相撲。8月に初めてのドーピング(禁止薬物使用)検査が実施されるのも、その一つの表れだ。きっかけは、昨年11月の衆院文部科学委員会での松浪健四郎議員の発言だった。「40年前のお相撲さんの平均体重は117.5キロ、それが今は155キロだ。ドーピングが原因ではないか。今の力士は体が大きくなったからけがをする。」指摘の当否はともかく、筋肉量を飛躍的に増やす、たんぱく同化ステロイドなどの薬物の存在は広く知られている。実際に服用中の30代の男性ボディービルダ―に話を聞けた。最初はピンク色の錠剤だった。1週間で効果が見え始めた。「多幸感が出てきて何事にも前向きになる。疲れを感じない。睡眠も短くて済み、がんがん練習できた。」70キロ台だった体重は5〜6年で110キロ超へ。ベンチプレスは最高260キロを記録した。この男性の骨格からすれば、トレーニングだけでは作れない体だという。競技会の検査を4回クリアした。徐々に弱い薬に代え、本番の数週間前に服用をやめる。痕跡は完全に消えた。しかし競技連盟の抜き打ち検査で発覚し、失格に。今は検査がない海外のプロ大会を目指している。「ドーピングは隠せる。自分の力で制御できる」と男性は断言する。だが、使用を始めた当初は副作用に見舞われた。その怖さとは・・・。その男性ボディ―ビルダーに筋肉増強剤の副作用が出たのは、服用を始めて3年目のことだった。胸が膨らみ、しこりも感じた。ホルモンのバランスが崩れて起きる現象だ。「女性化」を抑制する薬の投与を受け、増強剤も効き目の弱いものに切り替えてことなきを得たが、ドーピングにはこの種の怖さが常につきまとう。国際武道大の高橋正人助教授が開くサイトに寄せられる相談も副作用に関するものが多い。「抜け毛が目立つ」「下痢がひどい」「乳頭の下に違和感がある」・・・・。今はインターネットの通信販売で簡単に薬物を入手できる。正確な知識を持たず、いい加減な使い方をして変調をきたすケースが少なくない。また、見た目の異常や自覚症状が収まっても、「短期的に顕在化したものがないだけ」と高橋助教授は指摘する。後年、重大な後遺症に襲われるかもしれない。動脈硬化や肝機能障害、心臓の肥大化、がんなどの要因になるとも言われる。ソウル五輪の陸上女子短距離で金メダルを獲得したフローレンス・ジョイナーが98年、38歳の若さで亡くなった。死因はてんかん発作に伴う窒息死とされた。だが、引退して約10年後の突然の死に、現役時代にうわさされたドーピングが原因ではないか、との声は消えない。身体への影響を深く研究するために、禁止薬物を使っていた者の死亡原因の追跡調査が欠かせない、と唱える研究者もいる。女子マラソンの小幡佳代子はドーピングの抜き打ち検査を何度も経験した。ある時は合宿地の長野から帰る途中、携帯電話が鳴り、国際陸上競技連盟の検査官が「これから実施します。」新宿で待ち合わせ、女性スタッフの付き添いのもと、百貨店のトイレで尿を採取された。練習場や自宅の時もあった。世界ランキングの上位者などは行動予定表の提出が義務つけられ、係官の突然の訪問も珍しくない。「デパートで、とはさすがに驚いた」と小幡は苦笑するが、「潔白が証明されるから」と前向きにとらえている。検査には、練習期間中に突然行うものと試合後に成績上位者らを対象とするものとがある。80年代、陽性率は世界で2%を超えた。86年に抜き打ち検査が始まるとともに、検査法が進歩して新手の薬物も見逃されなくなったため抑止力が強まり、今は1%台に収まっている。日本の検査件数は多くない。00年は1750件。最多の米国は2万、ドイツやスペイン、豪州も1万を超す。血液検査に比べて安価な尿検査でも3万円かかるとあって、資金不足から「後進国」に甘んじている。改善の動きはある。01年、検査の管理や指導、啓発などにあたる日本アンチ・ドーピング機構(JADA)が発足。今春には処分を巡る仲裁を行う日本スポーツ仲裁機構も設立される。検査件数を増やすためにも、JADAは当面、協賛スポンサーの確保に力を入れる。去年2月、ソルトレーク冬季五輪のドーピング検査で奇妙な現象が見つかった。採取した血液を遠心分離器にかけた。普通は沈殿した赤血球と薄黄色の上澄みに分離されるのに、それは全体に赤いままだった。持久力上昇を狙い、牛のヘモグロビンを精製した人工赤血球を注入したのでは、との疑いが浮上した。だが、確証をつかむまでには至らなかった。近年、この種の血液ドーピングが目立つ。同五輪でも距離スキー男子のヨハン・ミューレック(スペイン)が造血ホルモンの服用で金メダルを剥奪された。新しい手法が次々と開発され、今や検査が極めて難しい「遺伝子ドーピング」の時代を迎えようとしている。例えば、造血ホルモンの遺伝子情報を組み込んだ無毒のウイルスを注射すれば、血液合成の促進が期待できる。見破るには選手の体の組織の一部を採取して遺伝子を解析するしかないが、そこまでの同意を得るのは難しい。三菱化学ビーシーエルの植木真琴ドーピング検査室長は「遺伝子治療が発達し、スポーツ能力の向上に直結するものも出てきた」と話す。筋ジストロフィー症患者の筋肉を再生させる治療法を健康体に応用すれば、筋肉を増やせるかもしれない。遺伝子ドーピングが現実に行われている可能性は低い。だが先手を打つ意味で、今年発効した国際オリンピック委員会などの新ルールの禁止事項に、それは盛り込まれた。