

雑誌「SWIM・12月号」が届き、またまた、「記事」が載りました!。記事を書くの
は、今年6回目だ〜!!。やはり、スペース上、かなり編集されてしまっているので、原文を載せます!。今回はウォーミングアップについて…。実は私は、この「ウォーミングアップ」について、ものすごく研究していたことがあって、水泳に限らず、あらゆるジャンルのスポーツのウォームアップを調べていました。もうこれだけで1冊の本が書けるくらいの資料があります。今回は、かなり分かりやすく、簡単に書いてありますが、きっと参考になるかと思います…。では原文を…。
ウォーミングアップ
最も理想的な「ウォーミングアップ」とは何か…。これは、私も長年研究してきた課題です。これは誰しも知りたいところのはず。これは水泳に限らず、様々なスポーツで共通の課題です。そこで、様々なスポーツのアスリート、コーチ、研究報告などをまとめた結果、水泳にとって理想的な「ウォーミングアップ」についてお話します。
●ウォーミングアップの必要性
そもそも、ウォーミングアップは、した方がいいのか?。ウォーミングアップは、なぜするのか?。その必要性とは…。
運動を始めると、筋肉の収縮が始まります。この筋肉を収縮するためには、たくさんの酸素や栄養が必要となります。たくさんの酸素や栄養を送るには、血流を激しくしなければならず、血流が激しくなるということは、心拍数が上がり、血圧も上がることになります。このような身体の変化が突然起きると、心臓への負担が大きくなり、特に中高年の方たちが、このような急激な変化に心臓がついていけなくなり、亡くなるケースもあります。また、関節の動きが、ぎこちないうちに運動すると、スムーズな動きを妨げるばかりか、ケガの原因にもなります。こういったことを身体が準備する上でウォーミングアップは必要ということになります。
●ウォーミングアップの効果
ウィーミングアップをすることで、どのような効果があるのでしょうか?。
1.
代謝がよくなる
身体を動かすと、体温が上昇してきます。体温が上昇すると、細胞の代謝が活発になり、血液から細胞へ酸素の交換が活発になります。このような代謝がよくなることで、運動するための身体の準備ができます。
2.
柔軟性がよくなる
身体を動かすと、筋肉の温度が上がります。筋温が上がると、筋肉の弾力性が向上し、柔軟性がよくなります。また関節の動く範囲も、その人がもつ最大限まで高めることができます。
3.
動きがスムーズになる
身体を動かすと、神経の伝達速度が速くなります。神経の伝達が速くなることで、神経の反応時間が速くなり、筋肉の収縮のバランスがとれ、スムーズな動きができるようになります。
4.
ケガの予防
急に激しい運動をし、筋肉が急に伸びると、反射的に、収縮しようとする動きがあります。これによって起こる、けいれんや肉離れ、腱断裂などを、ウォーミングアップをすることで、未然に防ぐことができます。
5.
心理的効果
体を動かすことで、アドレナリン量が多くなり、中枢神経を刺激して、モチベーションが高まり「やる気」がでます。また、緊張を解き放し、リラックスすることもできます。
●ウォーミングアップとは
以上、ウォーミングアップの必要性、効果などが理解できると、ウォーミングアップと言うのは、単純に「体温を上げること」であるがわかります。では、これらをふまえた上で、効果的なウォーミングアップとは、また、やってはいけないことなどが、いくつか考えられます。
●効果的なウォーミングアップとは…
・筋温
これは、実際にはなかなか計れないのですが、知識として知っておくといいです。動かない状態の筋肉の温度は、約36.5℃で硬い状態になっています。この筋肉の温度「筋 温」は38℃になった時、最も筋肉の機能が発揮されると言われています。
・時間
ウォーミングアップの時間は長すぎると疲労がたまり効果的とは言えません。また短すぎても身体が温まらずに効果があらわれません。一般に15〜30分問のウォーミングアップが、体温、筋温を上げると言われていますが、ある研究では、ウォーミングアップ中の筋温は15分程度で一定になり、その後はあまり変化しないと言われていて、そうすると、最も効果的なウォーミングアップの時間は「15分間」ということになります。
・ウォーミングアップ終了からレースまでの時間
ウォーミングアップ終了後、45分以上時間が経つと筋温が戻ってしまい、ウォーミングアップの有効な効果は消失すると言われています。ある報告では「ウォーミングアップ後、20分以内にレースをする」のが最も効果的という結果も出ています。つまり、ウォーミングアップをしてから時間がたちすぎてしまうとウォーミングアップの効果はないということになります。
●ウォーミングアップでやってはいけないこと
・急激に心拍数を上げる
いくらウォーミングアップが必要だからと言って、やたらに動いたのでは、ウォーミングアップの効果は現れません。むしろ急激に激しく動くと言うことは、ウォーミングアップなしでレースをしているようなものなので、ウォーミングアップとはいえないということになります。ウォーミングアップは、徐々に運動する体の準備を整える時間なので、徐々に心拍数を上げていくのが理想と言えます。
・身体を冷やす
ウォーミングアップとは、身体を温めること。つまり身体を冷やすなどということは、まったく正反対のことですから、絶対にしてはいけないことになります。これは特に水泳の場合ですが、水に濡れている状態というのは、急激に体温を奪われます。「せっかくウォーミングアップをして、体温、筋温を上げたにもかかわらず、濡れた身体で、プールサイドにいたおかげでかえって寒くなってしまった…。」よくある話だと思いますが、これは、「一番やってはいけないこと」なので、ウォーミングアップが終わったら、身体を拭いて、「身体が乾いた状態」でいること。できれば、「Tシャツ・ジャージ・くつした」など、寒くならないための防寒対策は絶対に必要です。一番いいのは、「乾いた水着に着替えてしまうこと」。身体が乾いていれば、プールサイドの温度は30℃以上ありますから、水着以外のものを着る必要もないと思います。
●ウォーミングアップの心拍数
ウォーミングアップとはどのくらいの心拍数にすればいいのか。これは「マフェトン理論」と言って運動時のエアロビック心拍数を出す公式で、以前からマラソンランナーが指標にする公式です。これを元に、運動する上で、必要な心拍数の最低数値を出し、その数値から+10の間に、15分間かけて、その心拍数に上げていくと、分かりやすい、ウォーミングアップになると思います。
例えば、私の場合、37歳で「B」だとするとすると、「180−37−10=133」になります。その「+10の間」になるようにすればいいので、運動開始後、15分間かけて1分間の心拍数を「133〜143」にしていくということになります。
A 180‐年齢-5
2年以上の間、順調にトレーニングが出来ていて、競技の成績が伸びている場合。
B 180‐年齢-10
過去2年間、風邪をひいたのは一度か二度で、大きな問題もなくトレーニングが出来ている場合。
C 180‐年齢‐15
競技や成績が伸び悩んでいて、良く風邪をひいたり、故障や怪我を繰り返している場合。
D 180‐年齢‐20以上
病気にかかっていたり、治ったばかり、手術したばかり、退院したばかり、もしくは投薬中の場合。
●究極のウォーミングアップ
以上のような科学的見地からの考える、最も効果的な「究極のウォーミングアップ」は、このようになると言うことがわかります。
「レース20分前に、15分間の、徐々に心拍数を上げていくウォーミングアップを終了し、乾いた水着に着替えて、招集に行き、レースに挑む」。これを具体的に考えてみると、「自分の出場予定時刻が「12:00」だとします。そうすると、ウォーミングアップは「11:40」に終了し、その15分前にウォーミングアップを開始するので、ウォーミングアップ開始時間は「11:25」と言うことになります。その前の準備として、乾いた水着を用意していないといけませんから、レースの45分〜1時間前には、準備が必要と言うことになります。
しかし、これはあくまで、科学的な理論に基づいた方法であって、実際には、泳ぐウォーミングアップができない環境の場合もあります。では、「泳がないでもできるウォーミングアップの方法」を考えてみましょう。
●泳がないウォーミングアップ
心拍数を上げ、体温、筋温を上げるということが「ウォーミングアップ」ということですから、泳がないでもいくらでも方法は考えられます。
・走る、または歩く
走ったり、歩いたりすることは、泳ぐのと同じ効果が得られるので、アップするプールがない場合など、会場の周辺を歩いたり走ったりするのは大変効果的です。ただし、徐々に心拍数を上げるようにすることが理想なので、「5分間歩く」「5分間早歩き」「5分間走る」という方法はお勧めです!。歩く際に腕を回しながら歩いたりするとさらに効果的です!。
・階段を使う
遠くへ行かず、あまり移動せず、ウォーミングアップ効果が得られるのが「階段の昇り降り」です。階段は、まずどこにでもあると思います。この階段を昇ったり降りたり。ゆっくりでも15分もやると身体がとっても温まります。これも腕を回しながら行なうとさらに効果的!。
・足踏みをする
もう、全くその場から動けないような状況の場合、その場で足踏みをしてみましょう。これも15分続ければかなり温まります。これも腕を回しながら行なうとさらに効果的!。
・ゴルフボール踏み
これは私がやる方法なんですが、ゴルフボール2個を置いてボールに土踏まずがあたるように立ちます。片方ずつ体重をかけて、立ったまま「足裏マッサージ」をするのですが、これはあっという間に身体が温まります!。
・ストレッチ
運動としてはかなり少ないのですが、一つの動作に時間をかけて行なうと、15分でも身体は温まります。
・サウナやお風呂に入る
これは、単純に身体を外から温めることで体温を上げる方法。ただ、外から暖めると言うことは筋肉の温度は上がりにくいため、身体を動かすウォーミングアップから比べると、効果は薄いと思われますが、実際にこれを実施しているTOPアスリートは多いです。
・息を止める
これはもう、何にもできないときの究極の方法です。これ、私は、ホームレスの人に「体力を使わずに身体を温める方法」として教わったのですが、これを実践しているアスリートが意外にいることがわかりました。「アップは無駄な体力を使う」とか、「アップをするとかえって疲れる」と思っている短距離選手が意外にこの方法をとっている言う話を聞き、驚きました。
●練習でのウォーミングアップ
皆さんは練習でのウォーミングアップをどの位していますか?。ウォーミングアップは、「距離の問題」ではなく、「時間の問題」です。ウォーミングアップの適正時間は15分間。15分かけて「筋温をあげる」こと、「15分間かけて徐々に心拍数を上げること」がウォーミングアップということになります。陸上で言うと「いきなり走る」ではなく、「ゆっくり歩く」くらいの感覚からはじめ、15分かけて「早歩き」「ゆっくり走る」「走る」という段階にもって行くといいのです。
練習をしていて、このような経験はありませんか?。
「はじめは重かったけど、15分〜30分くらいたったらで身体が動いてきて、水に乗ってきた」とか、「今日はダメだと思ったけど、泳ぎ始めたら結構泳げた」など。誰しもこのような経験はあると思います。この「この身体が軽くなってきた」「身体が動くようになってきた」と言う感覚が、「ウォーミングアップ効果」なのです。
例えば、組んだメニューが運動開始5〜10分後でウォーミングアップが終わっていたとします。メニュー上は、ウォーミングアップが終わり、次のメニューが始まっていたとしても、運動開始、15分間は、ウォーミングアップの時間ということになりますから、ウォーミングアップ後のメニューも、効果としては「ウォーミングアップ」と言うことになるのです。…ということは、メニューを組む上で、運動開始15分間は、「体を温める」ということが目的になりますから、「技術的に難しいメニュー」や、「スピードを上げるメニュー」などは、運動開始15分間は、入れない方がいいということになります。運動開始15分間に、このようなメニューを入れたとしても、「身体がそのメニューの効果を発揮できる状態になっていない」ので、意味のないものとなってしまいます。
また、こんな場合は…。
「今日は20分しか泳げない」という場合、仮に20分しか泳げないとしても、運動開始15分間はウォーミングアップということになります。ということは実質練習メニューができるのは5分間。でもクールダウンを考えると、練習としてはほとんでできないということになってしまいます。しかし、ウォーミングアップは何もプールでしなければいけないわけではありませんから、プールに向かう最中に早歩きをしたり、足踏みしながら着替えたり…しながら、15分の時間が過ぎ、「筋温を上げ、心拍数を上げること」ができれば、それでウォーミングアップは完了ということになりますので、プールに入っていきなりトレーニングに入ることができます。
●結論
ウォーミングアップとは、何らかの方法で身体を温めることができればいいのです。これが一番いい方法というものはなく、人それぞれ自分に合ったものをすればいいのです。ご自分に合った方法を見つけてみてください!。